設立の趣旨

弟子屈町は、周囲の都市部からちょっと離れているということから、夜空が暗く、とてもきれいな星空を見ることができます。
かつては、摩周湖星紀行という観光ツアーが実施され、たくさんのお客さまが訪れていました。
しかし、弟子屈町民が星空を楽しもうとすると、有料のガイドツアーに参加するとか、そうでなければ独学で勉強するしかなかったのが現状です。
こんな時に、気軽に一緒に勉強したり楽しんだりする仲間がいれば、星空や宇宙・天文の知識を深めたり、楽しみ方を学んだりできると考えました。
日本国内でも有数の星空が頭上にある、この弟子屈町で、ともに星空を楽しむ仲間がいればという思いで、てしかが星空愛好会を設立することにしました。
 
また、近年LED照明の普及により、省エネルギーのために照明を消す・減らすという考えが希薄になってきています。
弟子屈の町内には、新しくいくつもの建物が建設されています。
このため、とてもきれいな弟子屈の星空も、明らかに「明るくて星が見にくい空」へと変わりつつあります。これまでの美しい星空をいつまでも楽しめるように、星空を守ることも喫緊の課題と考えます。
てしかが星空愛好会では、星空を守るために「星空保護区」への登録を目指したいと考えています。
 
多くの方々と星空を楽しみ、またこのきれいな星空を後世に残せるような活動ができればと思います。
 
美しい弟子屈の星空を楽しまないともったいない!
美しい弟子屈の星空を守らないともったいない!
 
この2つが、てしかが星空愛好会の原動力です

これまでの経緯です。
このうち、弟子屈の星空の美しさ、
それが劣化しているということ、
星空を守るために、
星空保護区、
について、以下で説明します。

星がきれいであることを、数字で表現することができます。
前述のように、「いろいろな光で夜空が照らされていない」ということが、星がきれいに見える条件になります。
言い換えると、どれだけ夜空が暗いか?ということになります。
以前は、たとえばオリオン座のどの星まで見える?
のような形で、アナログに評価されていましたが、視力にも寄りますので、なかなか客観的とはいえない状況でした。
現在は、デジカメを利用して、測定する方法が確立してきています。
星空公団が開発した、デジカメ星空診断という手法です。
カメラを真上に向けて撮影し、そのデータから、星のないところが何等星かという数字を出すことができます。
測定値は、このオレンジ色で囲ったメモリのところの数字です。1等星、2等星と、だんだん暗くなりますので、背景の暗いところが(単位面積当たり)20等星とか21等星という意味です。
数値が大きいほど、星がきれいに見える環境です。
東京の都心では、17よりちょっと下の数字になるそうです。
天の川のスケールを見ると、
20を超えると天の川が見える。
21を超えると、細かい構造まで見える。
というイメージです。
見える星の暗さのスケールと、星の数のスケールもついています。
空が暗くなるにつれて、6等星まで、7等星まで見えるような状況になり、そのとき、見えるはずの星の数は、2000個から5000個以上に増えてくることになります。

こちらは、ぽらりすでとったデータと他の地域を比較したものです。
道内の天文台所在地に比べると、ちょっと弟子屈の方が良いくらいです。
本州で、星空観光を売りにしている地域とくらべて、弟子屈の方が圧倒的によいです。
さすがに、絶海の孤島にはかなわないようです。
毎年2回の環境省のデジカメ星空観察に提出しているデータを時系列でグラフにすると、年々悪くなっています。
町内の街灯のLED化も含めて、先ほどお話した光害が増えているという状況です。
これらのデータから、
弟子屈は星空がきれいだ。ということがわかりますが、
同時に、いつまでもそれを楽しめるようにするには、何かアクションが必要ということもわかると思います。

弟子屈中心部や川湯温泉街は、小さな市街地ですが、それでも影響はゼロではありません。
左上は、ぽらりすから市街地の方を見たときの写真ですが、街の明かりが空に映って、その周辺の星は見えません。
これが大きくなると、頭の上の方まで明るくなって、見える星の数がどんどん減ってきます。
あかりは、安全を確保するために道路などを照らしたり、お店がわかるように看板を照らしたりしています。
残念ながら、光をコントロールするのは、それほど簡単ではないので、光が余ってしまっている状況だと思います。
言い換えれば、「無駄な光」がたくさんあるわけです。
星が見えないだけであれば、まあよいのかもしれませんが、そうではありません。
例えば、南の島ではウミガメが孵化した後、月の光を頼りに海に向かうのですが、照明を月明かりと誤認して、反対の方向に行ってしまい、生命を落とす事例が発生しています。
渡り鳥も、街の明かりで方向を失うそうです。
夜間も光に当たっている稲は、発育が悪くなるという結果が出ているそうです。
特に夜行性の動物や鳥には影響が大きいようです。
また、天文台の観測に支障をきたしているというのも現実にありますし、さらには人体の体内時計を狂わせて、悪影響があるという研究結果も出ています。
LEDの普及がこれを後押ししている状況です。
電球のころは、省エネのためCO2削減のために消灯しようというのが普通の考え方でした。
が、LEDで消費電力が少なくなったことで、光を増やすことに対する抵抗感がとても少なくなっています。
現状、光害が毎年10%ずつ増えているという調査結果も出ています。
今はきれいな弟子屈の星空も、だんだん見えなくなってしまうかもしれないのです。

空を暗く、という話をすると、真っ暗にしたら危ないだろう・・・という誤解をされる方が多いですが、決してそういう話ではありません。
各家庭でいえば、必要のない外部の照明を工夫しましょう、カーテンを閉めましょうとか、いくらかできることがありますが、なかなか微々たるものかもしれません。
大きな位置を占めるのが、夜になると、自動的に点灯する照明です。
街の街灯です。
これを光害の出にくいものに替えましょうということです。
これには当然お金がかかるので、役場がその気にならないとできません。
が、自然豊かな弟子屈町が、この先も豊かな自然を守ってゆくうえで、摩周湖、屈斜路湖や釧路川を守るのと同じくらい、光の環境を守ることは、ここに住む野生動植物にとっても重要だと考えます。
繰り返しますが、必要な光を消すということではありません。
ここに書いてある5つの原則を守ることで、光害を減らすことができます。

もうひとつ、星空保護区というものについて、お話します。
お話したような光害対策をちゃんとやっていて、星がきれいな地域は、世界的に星空保護区として、認定してもらうことができます。
いわば、星空の世界遺産です。
いろいろ揃えなくてはいけない条件はありますが、認定に向けてのアクションをしてゆけば、たとえば、町の真ん中にある、この公民館の前でもきれいな星空が見られるような、素敵な街になることができます。