2025.06.06に、シーニックバイウェイのルート総会にて、星空観光のお話をさせていただきました。
その資料に基づく、最新資料です。
本日は、星にまつわるところで、このような6つの話題について、順次お話ししたいと思います。
まず、星空という観光資源について、お話ししたいと思います。
観光資源としての、星空の位置づけを考えるにあたって、乱暴ではありますが、観光資源を大きく二つに分けてみました。
摩周湖型と釧路川型という2種類です。
行けば、見れば、それだけで楽しんでもらえるのが摩周湖型。
ガイドさんなり、案内をしてもらうことで、楽しめるのが釧路川型。ということです。
星空は、どちらかというと、摩周湖型だと考えています。
星空観光というと、ガイドが必要とか摩周湖に連れて行ってとか、ついつい大掛かりなことを考えてしまいますが、そこにきれいな星空を用意して、旅行に来た皆さんにお知らせすれば、それで見て楽しんでもらえるのです。
もちろん、ガイドさんの活躍の場もあります。
星の話は奥が深いです。
神話の話や宇宙物理学の話など、広範囲の知識欲をあおられます。
それでも、飛び切りの星空は、見ていただくだけで楽しんでもらえる観光資源だと思います。
あと、重要なのは、自然を楽しむ観光資源は、しっかり守らないといけないということです。
摩周湖などが国立公園として守られているように、星空も守る必要がある。ということです。
次に、弟子屈の星空のすばらしさについて、お話いたします。
ちょっと基本的なところから、お話ししたいと思います。
星がきれいということは、どういうことでしょうか?
一つ一つの星がきれい・・・ということではなく、星がたくさん見えるということであり、暗い星まで見えるということです。
星の見え方は、その時の光の環境によって、大きく左右されます。
左の写真を見てください。
星空の解説をするのに、懐中電灯で星を指し示しているところです。
空気は、無色透明で、そこにあることを感じませんが、光を当てると、このように光ってしまいます。
「光があると空気が光る」ということが重要になります。
昼間は太陽が明るいので、空気が青く光って青空となり星は見えません。夜になっても、月があると光ってしまって、明るい星しか見えません。同じように、月がないときでも、街の明かりがあると、空気が光って、暗い星は見えなくなります。街の明かりが空を照らしていなければ、暗い星までよく見え、「星がきれい」ということになります。
星がたくさんというのはどれくらいの数か、というのが、右の表です。
暗い星が見えるほど、加速度的にたくさんの星が見えるようになるのが、わかっていただけると思います。
太陽や月の光は変えられませんが、街の明かりを変えることはできます。
このあたりが、きれいな星空を見るポイントになります。
この画像は、人工衛星から撮った夜の北海道の画像です。
光って見えるのは街明かりなのですが、街明かりが上空の人工衛星まで届いているということです。
ということは、空気が光ってしまっているということになります。
弟子屈は、大きな市街地から離れていて、この街明かりの影響を受けにくく、夜空が暗いので、星がきれいに見える条件を持っているということができます。
2016年のナショナルジオグラフィックのデータでは、日本人の70%が天の川が見えないところに住んでいるということです。
もう9年たっていて、この間爆発的にLEDが普及していますので、もっと悪くなっていると思います。
今は、80%以上の人の住んでいるところから、天の川が見えないと予想できます。
弟子屈は、天の川がよく見える町です。
うっすらではなくて、かなりしっかり見えます。
弟子屈町民は、日本人の中の、ほんの一握りの恵まれた環境に住んでいるということになります。
星空がきれいな弟子屈町ですが、今年2月13日の釧路新聞にこんな記事が載っています。
日本一というのがどこから出てきたのか?ということをお話ししたいと思います。
実は、日本一の星空を名乗っている地域は何か所かあります。
ネットで検索すると、一番たくさん出てくるのは、長野県下伊那郡の阿智村です。
こちらは、環境省の「夜空の明るさ調査」で、2006年に、夜空が暗かった場所のトップになっています。
もう一か所は、福井県大野市です。こちらも、環境省の夜空の明るさ調査で、2004年、2005年に日本一になっています。
20年近く前の話ですが、これをもとに「日本一」をうたってプロモーションをしています。
環境省の夜空の明るさ調査について説明します。
かなり古く、昭和63年(1988年)から毎年夏と冬の2回実施されている調査です。
環境省の調査なので、ランキングを決める調査ではありません。
調査したいところがデータを取って、環境省に渡すという仕掛けなので、全国を網羅的に集めたものではありません。
ですが、最近では毎回400か所くらいのデータが集まるので、かなり星空がきれいなところでないと一位にはなれません。
最初はカメラで撮影したフィルムを分析にかけて、測定していたそうです。
処理が大変なのと、現像条件による誤差も大きかったようです。
2011年くらいから、デジカメを用いる方法が構築されています。手軽に測定できるようになって、星空を売りにしたい観光地などは積極的に参加するようになっています。
ぽらりすでは、2019年の「星空の街・あおぞらの街」全国大会の準備として、前年に環境省の方が測定法を教えてくださったので、測定を開始ました。
そのデジカメ星空診断という測定について、もうちょっとお話します。
前述のように、「いろいろな光で夜空が照らされていない」ということが、星がきれいに見える条件です。
言い換えると、どれだけ夜空が暗いか?という言い方になります。
夜空を決められた条件で撮影し、明るさのわかっている星と、星のないところとの比較で、背景が何等星かという数字を出すことができます。
測定値は、オレンジ色で囲ったメモリのところの数字です。1等星、2等星と、だんだん暗くなりますので、背景の暗いところが20等星とか21等星という意味です。
数値が大きいほど、背景が暗く、星がきれいに見える環境です。
大都市では、17よりちょっと下の数字になるそうです。
天の川のスケールを見ると、
20を超えると天の川が見える。
21を超えると、細かい構造まで見える。
というイメージです。
見える星の暗さのスケールと、星の数のスケールもついています。
空が暗くなるにつれて、6等星~7等星まで見えるような状況になり、その時、見えるはずの星の数は、2000個から5000個以上に増えてくることになります。
この測定法で、環境省が毎年2回、全国から有志を募る形で、夜空の明るさ調査を実施しています。
その2024年の夏の結果が同年の12月に発表されました。
発表されたすべてのデータ(507件)をまとめたところ、硫黄山で測定したデータが全国で一番良い結果であることがわかりました。
もともと、ランキングが目的ではなく、環境省が状況の変化を記録するための調査です。
測定地点は、測定したい人が測定して環境省に報告する形なので、日本全国津々浦々までを網羅しているわけではありません。
また、環境省が順位として発表しているわけでもありません。
それでも、天文台や星空保護区など、地域として星空に関連しているところは継続的に参加しているので、トップクラスであることは間違いありません。
今回、てしかが星空愛好会のメンバーの協力で、新たに硫黄山での測定を行ったところ、全体1位という結果でした。
これまではぽらりすでの測定値は、トップになったことがありませんでした。(過去に硫黄山測定していれば、トップだったかもしれません。)
そのあたりの詳細を、考察してみました。
今回の考察の対象は、弟子屈町内のデータ、道内トップレベルの陸別天文台のデータ、星空保護区としてこれまで国内トップであった、西表石垣国立公園の竹富町波照間島・東京都の神津島です。
この解析によって、弟子屈町の特徴が明らかになってきました。
これは、対象とした地点の過去3年間の夏のデータです。
一部は、2018年のデータもあります。
2018年の22.1というデータは夜空の暗さとしての限界に近いそうで、これ以上の測定値はほぼ出ないということになります。
すべての地域で、明るくなる傾向にあります。
世の中では一般的に、「LEDの普及による照明の使われ方の変化」が夜空を明るくしている」と考えられています。
以前は、「節電のために電気消しましょう」と言っていたものが、LED化によって消費電力が1/7程度まで下がるので、消しましょうとは言わなくなっています。
また、設置場所の自由度が上がっているので、新たな照明がどんどんつけられています。
西表石垣や神津島のような島については、まわりが海なので大丈夫かと考えていましたが、例外ではないことがわかりました。
先ほどの説明を思い出してください。星が見えにくくなるのは、光で空気が光ることが原因です。
なので、光なのか、空気なのかということを考える必要があります。
この二つは、近年大きく変化している部分でもあります。
光は、LEDの普及。空気は温暖化です。
今回、てしかが星空愛好会のメンバーの協力により、点ではなく面として測定ができたので、新たなことがわかってきました。
弟子屈町内の複数のデータについて、整理しました。
藻琴山展望駐車公園のデータは、測定時間外の参考値ではあるが、整理に含めています。
弟子屈市街地に近いほど、悪くなっている傾向が見えたので、弟子屈町役場からの距離を横軸に、測定値をプロットしてみました。
すると、地形の要素もあるためきれいな直線にはなりませんが、大きな相関があることがわかりました。
今回、硫黄山での測定値が全国トップになった原因の一つが、この「明るい市街地からの距離」であることが推察されます。
先ほどの原因考察ですが、温暖化に伴う大気の変化の影響であるならば、市街地からの距離との相関は出ないはずですが、このような傾向が見えましたので、市街地の光の影響が大きいということが言えると思います。
以前は摩周湖星紀行というコンテンツもあって、星がきれいに見えるところとして売り出している摩周湖ですが、かなり星が見えなくなっているということがわかりました。
原因は弟子屈市街地の照明にあることもわかってきました。
では、もうちょっと遠い市街地の影響がどうなっているのか、考えてみました。
都市部の光の影響を確認するために、光害マップと比較してみました。
2つの地図はほぼ同じ場所を示しています。
光害マップ
https://astrotourism.jp/map/japan_lightpollution_map.html
弟子屈町は、釧路・北見など光害の大きな都市部から50km以上離れている立地であることがわかります。
羅臼近辺の海上の光は、漁船の漁火です。
これを、弟子屈以外の地域についても調べてみました。(3ページ前のグラフの地域です)
左上は、今お話しした弟子屈町の地図です。
西表石垣国立公園の波照間島(星空保護区)
東京都神津島(星空保護区)
陸別天文台
西表石垣国立公園の波照間島は、
石垣市までは50kmと離れていますが、石垣市の人口は5万人と多めであり、途中は海で遮るものがないため、光害の影響を受けています。
神津島は、新島がとても近く、途中は海で遮るものがないため、光害の影響をうけています。
陸別町は、北見市の人口が多く、距離も近いため、光害の影響をうけています。
弟子屈町は、北見市や釧路市から比較的遠いため、影響は限定的であり、弟子屈市街地の影響で、摩周湖の空が明るくなっていると言えます。
海では遮るものがないという予測をしたので、弟子屈の山の状況を確認してみました。
これは、北見市から弟子屈、さらに釧路までを直線で切った断面図です。
縦軸は30倍になっています。
山が、大きな市街地の光を防ぐ、衝立の役割をしてくれているのかもしれません。
弟子屈町は屈斜路カルデラの中にある町です。
一回り外輪山に囲まれた地形が、外部からの光害の侵入を抑制しているのかもしれません。
そうすると、弟子屈という場所は、星を見るということについて、素晴らしい素質を持っているともいうことができます。
この後お話ししますが、弟子屈市街地の照明の使い方をちょっと工夫するだけで、他の地域ではまねのできない星空を守ることができると考えています。
ここまでも出てきている、光害(ひかりがい)という言葉について、説明します。
左上は、ぽらりすから市街地の方を見たときの写真ですが、街の明かりが空に映って、その周辺の星は見えません。
明かりは、私たちの生活に必要不可欠です。残念ながら、光をコントロールするのは、簡単ではないので、光が余ってもれてしまっている状況だと思います。言い換えれば、「無駄な光」がたくさんあるわけです。
星が見えなくなる以外にも、以下のような悪影響があります。
ウミガメや渡り鳥など、月や星を頼りに行動する野生動物の方向感覚を狂わせてしまいます。
植物も、夜間は光合成をしない時間にならなくてはいけないので、生育が悪くなります。
人間も、体内時計の狂いなどの悪影響を受けます。
「LEDの普及による使われ方の変化」がこれを後押ししている状況です。
以前は、省エネのためCO2削減のために消灯しようというのが普通の考え方でした。
LEDで消費電力が減ったことで、光を増やすことに対する抵抗感がなくなっています。
現状、世界中で光害が毎年10%ずつ増えているという調査結果もあるそうです。
きれいな弟子屈の星空も、すでに見えにくくなっています。
照明を使っている限りは、光害はゼロではありません。必ず何らかの影響が出ています。
光を使うことに関して、意識改革が必要な状況になっています。
アメリカのスミソニアン自然史博物館にて、2023年から「光害」の啓発の特別展が開催されているくらい、問題視されています。
https://naturalhistory.si.edu/exhibits/lights-out
では、その光害の対策は、どのようにすればよいのか?というお話をします。
ここで、強調しておきたいのは、必要な光を消すという話ではない。ということです。
星空を守ろうという話をすると、かなりの頻度で、「安全が」というリアクションが返ってきます。
そういう話では全くなくて、無駄な光をなくしましょうということなのですが、なかなかご理解いただけないようです。
光害対策は5つのルールに整理されています。
これは、星空保護区を推進する、アメリカのDarkSkyと、国際的な照明の規格を管理している、照明工学協会(IES)が共同で2020年に設定したものです。
このルールは、翌年の環境省の光害対策ガイドラインにも反映されています。
明るくする目的を明確にし、
明るくしたいところだけを、明るくしたい時間だけ、必要最小限の明るさで照らしましょう。
青白い光より、暖色系のほうが悪影響が少ないです。
というルールです。
これを守っていれば、先ほどお話ししたような、光による、自然や人間への悪影響を抑えることができるということです。
左下の絵は、対策を現した、ダークスカイが作った図です。
繰り返しになりますが、必要な光を消そうという話ではありません。
下向きの照明ということの、もうちょっと細かい話です。
上向き、下向きという大雑把な表現だと、一番左と2番目との比較が皆さんの頭の中に浮かびます。
すると、「すでに下向きである」という認識を持ってしまう方がとても多いのです。
街あかりがたくさんあるような地域では、それでよいのかもしれませんが、弟子屈町は、もともとの暗さレベルが高いので、わずかな上方光束が悪い影響を与えてしまいます。
2番目も3番目も光害を発生してしまいます。
上に向かう光がゼロになる照明を用いることで、かつての星空を取り戻せる可能性があります。
右の写真は、摩周駅前のものですが、よく見ると2種類の街灯があります。
旧型?から新型?に置き換わって、上方光束がとても小さいものが使われているような気がしています。
このような街灯について、上方光束のないものが使われつつあるようなトレンドがあれば、とてもうれしいのですが、今のところ確認できていません。
町内のすべての照明が、新型?のようなタイプになれば、かなり光害が抑えられると考えられます。
残念ながら、装飾的な街灯や、上向き照明もかなりありますので、徹底した対策をしてほしいと考えています。
ここで、ちょっと弟子屈の観光の現状について説明します。
弟子屈の観光の状況について説明します。
これは、役場のホームページに載っている観光入込数をグラフ化したものです。
日本の中で、北海道は、行きたい観光地ナンバーワンをずいぶん長いこと保持しています。
その中で実際には、この町弟子屈に来てくれている人は、年々減っているのが現実です。
日本人の人口も減っていることもあり、ある程度減っているのは、現状仕方ないかとも思いますが、注目しなければいけないのは、「摩周湖」の減り方が大きいことだと思います。
これをどう解釈すればよいのか?いろいろあると思いますが・・・
その理由の一つに、この地域の知名度の低下があると思います。
「霧の摩周湖」という歌があるのをご存知の方も多いと思います。
1966年の布施明さんのヒット曲です。1964年が、最初の東京オリンピックです。このタイミングで、カラーテレビが一気に普及した時期です。
いまほどいろいろ娯楽があったわけではないので、家に帰ってテレビを見るのが楽しみだった時代です。
その時のヒット曲ですから、日本中の人が知っていた。知名度100%だったわけです。
となれば、北海道に行くなら、摩周湖に行こうということになります。
が、そこからすでに60年近く。リアルタイムで霧の摩周湖を知っている世代は、65歳以上の方たちです。
知名度が下がれば、来る人が少なくなる。というのが、私たちの危機感です。
もう一つ、弟子屈地区の観光には難しさがあります。
これは、ひがし北海道は、比較的共通の悩みかもしれません。
それは、季節による山谷の大きさです。
グラフは、弟子屈町内の主要宿泊施設の宿泊者数の昨年のデータです。
一番多い8月と、一番少ない12月のほぼ5倍です。
冬の魅力がある北海道ですが、旬のシーズンは短く、2月だけです。
これだけのお客さんの数の違いに対応するとなると、人手や経費など、ランニングコストが掛かるコンテンツは、通年での利益を出すことが難しくなってきます。
インフラとして観光資源を準備して、ランニングコストを抑えるような観光施策が必要であるということです。
ここまでも出てきております、星空保護区についての説明をします。
星空保護区ということについて説明します。
星空の世界遺産ともいわれるダークスカイプレイス、日本語では「星空保護区🄬」です。
保護区というと、誰かがルールを決めて保護してくれる。というイメージがわくと思いますが、星空保護区はそういうものではありません。
世界遺産にルールが似ていると思います。
自治体などが、保護する取り組みをしっかりして、これなら大丈夫でしょ?と申請すると、条件を満たしていれば登録してもらえる。というものです。
登録を受け付けているのは、「DarkSky」という国際NPOです。
登録のためには、いくつかやらなければいけないことがありますが、それを上回るメリットがあると考えています。
努力していることを認めてもらうことは、ただ単にきれいだというよりも、自治体の姿勢を内外にアピールできる大きなメリットがあります。
いくら星空がきれいだと自分たちがPRしても、それは、通常のPRの域を出ません。
星空保護区への登録によって、大きな看板を上げることで、PR効果を絶大なものにすることができます。
Dardsky:
光害問題に対する取り組みで、世界的に先導的な役割を担う組織。
1988年に設立され、アリゾナ州ツーソンにある本部と世界18ヵ国の60以上の支部を有するNPO団体で、天文関係者を中心に、照明技術者、環境学者、教育者、法律家などで構成されています。
星空保護区に登録するメリットと、そのために必要なことをまとめました。
国際的なブランディングが可能。
メディアの注目によって、観光産業に寄与します。
特に宿泊が必要になるので、大きなメリットがあります。
自治体の評価として、環境保護に先進的に取り組んでいることを内外にアピールできます。
それに対して必要なことは、
街灯の交換が必要である。ということが一番重い部分だと思います。
費用も掛かります。
街灯の管理をしているのは町なので、官民の協力がなければ、実現しません。
(更新時期に変更すれば、費用はそれほどでもないかもしれません。)
このほか、光害対策を保証する条例の制定、教育プログラムがあること、観光プログラムがあることなどを求められますが、弟子屈町にとって実現できない内容はないと考えています。
これまで、星空星空といろいろなところでお話をしていますが、必ず返ってくる言葉が、「暗くするのは防犯上できない」という言葉です。
理屈上は、上に向かう光を減らすだけなので、足元は暗くならず、防犯上の問題は出ないはずですが、
私たちも、星空保護区というところには行ったことがなかったので、なかなか反論できずにいました。
なので、星空保護区に認定されている、福井県の大野市に行ってきました。
この地区のすべての照明が、星空保護区対応に変更されています。
いくつか種類はあるようですが、写真のような形です。
簡易な測定器ではありますが、照度計を持ち込んで、星空保護区対応の照明の真下での照度を測定しました。
同様に、弟子屈町内でも測定し、星空保護区対応の照明にすることで、暗くなってしまうかどうかを検証しました。
星空保護区対応の照明でも、町内にある通常の照明でも同様ですが、真下地面の明るさにはばらつきがありました。
大野市の星空保護区対応の照明でも真下での明るさは十分で、弟子屈町内の測定値よりも大きい(明るい)ことが多かった印象です。
星空保護区対応の照明そのものが暗いということはなく、その設置方法を工夫すれば、安全性を損なうことがないことが分かりました。
本来、照明は器具の特性と設置場所の環境に合わせて、高さや間隔を設定するべきだと思いますので、それを普通に実施すれば、暗くなる心配はありません。
星空保護区に登録したからといって、すべてがうまくいくとは限りません。
もともと観光地ではないところでは、宿泊施設がなく、経済効果に結びついていません。
また、公園を星空保護区登録した場合には、夜、公園までの足を確保する必要があったり、悪天候時に対応が難しいなど、うまく生かすためには相当工夫が必要になります。
せっかくの星空が失われつつある地域もあります。
近隣の市街地からの光害によって、星空の質が低下している。石垣島など。
以上のようなことを考えた場合、弟子屈町は、その恩恵を受けやすい条件がそろっていると言えます。
前述の説明で、摩周湖の星空を改善した上で登録しないと、十分な効果が得られません。
これを前提にすると・・
すでに宿泊施設がたくさんあり、それらの宿のお客様が増えることで、すぐに経済効果を発揮できます。
川湯温泉街から、川湯園地まで徒歩数分で、抜群の星空を見てもらえます。
その他の宿泊施設では、玄関先で星空を楽しめます
→星空ガイドをするにあたって、交通機関などの心配をする必要がなく、コストがかかりません。
(かつての摩周湖星紀行は移動コストがネックとなって、中止になっています)
弟子屈市街地、川湯市街地の対策を実施すれば、光害を及ぼす大都市が至近にあるわけではないので、星空の劣化を避けやすいはずです。(日本でトップの星空を標ぼうできる可能性が大きい)
実際に星空を守るための照明とは、どんなものでしょうか?
光が上に漏れない照明にするということです。
星空保護区に登録するには、自治体が管理する照明のすべてを、光害対策をしたものに交換することが必要になります。
また、星見スポットはちょっと工夫が必要で、光害対策照明にしたとしても、その真下では星は見えません。
照明は、腰より低いくらいの位置に設置して、足元のみを照らして安全を確保する。
見上げた時に、明るいものが目に入ると目がくらんでしまうので、そうならない位置に照明をつけるということです。
右下の写真は、ぐんま天文台に駐車場から登る道の照明です。
弟子屈、川湯の市街地にも、こういったエリアを設ければ、ほとんどの町民が徒歩3分以内で星見ができるようになるのではないかと思います。
まとめです
と、ここまでお話してきましたが、星空観光には難しい部分もあります。
例えばですが、弟子屈でしか見えない星は一つもありません。
同じ緯度であれば、同じ星しか見えません。
「きれいな星空」とか「満天の星」というのは、よく聞くフレーズであり、差別化がしやすいとは言えません。
実は、星空というのは、独自性を出すことが難しいのです。
また、天気が悪い時の代替プログラムが必要ではないか?
とか、観光客の山谷に対応するにはどうすればよいのか?
などの課題も気になってきます。
これらの課題に共通した解をもたらすのが、「星空観光のインフラ整備」という考え方だと思います。
あくまでもインフラとしての観光資源。摩周湖型の観光資源を目指すことで、悪天候時の対応や、観光客の山谷に対するランニングコストを減らすことができます。
また、インフラとしてしっかり星空を磨くことで、星空保護区という訴求力と、差別化しうる星空を得ることができます。
これをしっかり成立させたうえで、星空ツアーなどの方向性を探れば、さらに経済効果を期待することができるということです。
ここでは、「星空保護区に登録」した時のメリットを並べてみました。
看板を上げると書いていますが、「世界遺産」というようなわかりやすい看板は、集客に大きく貢献します。
「星空保護区」に登録することによって、国際的な看板を手に入れることができます。
いわば、星がきれいに見える「お墨付き」を得ることになるので、自力で何百回も「星がきれいです」というよりも大きな宣伝効果を期待することができます。
これは、今後PR活動にかかるコストを大幅に節約させてくれるに違いありません。
全国トップ・星空保護区になることで、人間の影響を極力控えた、本物の自然を売りにできるので、「行かずに死ねるか!」という目的地になることができます。
星空保護区のように、権威のある国際機関にお墨付きをもらえる可能性のある観光資源は、それほど簡単には見つからないと思われます。
星空は使っても減らない観光資源です。
先ほどから説明しているように、海に囲まれた島でも手に入れることができない星空がここにはあります。
他の地域ではまねができないところで勝負できるというのは、とても有利なことだと思います。
あと、星空観光は、「星を見る」というだけでなく、関連事業を比較的簡単に実施できるメリットがあります。
星占い、星座カクテル、などなど。
一度整えてしまえば、そのあとのランニングコストが安いこともメリットと考えられます。老朽化による更新は、通常の照明でも発生します。
ランニングコストでいえば、必要最小限の照明にすることによって、省エネ効果が期待できます。
10年20年先まで、大きな投資を必要とせずに、集客を継続することができます。
自然そのものを大切に利用することによって成り立つコンテンツなので、小学校中学校高校における地域学習の題材にもなりやすく、街灯の変更など、地域の努力をわかりやすく実感してもらえるという面もあります。国内トップという状況は、地域を誇りに思える内容であり、それを楽しむという経験は唯一無二のものになるに違いありません。これは、子供たちに限らないことかもしれません。